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空歌童心

『書く』『考える』『楽しむ』

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鬼と黒い影

物心ついたころ……3・4歳くらいだったと思う。
『鬼』だと思ったモノがある。

それは、大抵、ドライブ中に現れた。
山道を走る車の中。
窓の外を見てると、木々の陰に黒い影がある。……否。
人の姿に近かったような気がする。

それを見つけた瞬間、「あ、お母さんだ」という安心感と恐怖が押し寄せてくる。
次の瞬間にはその感覚を押しのけて

『あれがお母さんなわけがない』

と否定する。
車の中の母を見て『あれがお母さんだ』と自分自身に念を押す。
そして外の存在を『鬼』だと思いなおす。


あれが何だったのか知らないし、見間違いだと言われたらそうなのかもしれない。



だけど、あの頃、私はそんな事を繰り返しながら車に乗っていた。


時には車から降りた場所でもその影が傍にいたことがある。
一定の距離を保って、それ以上は近づかない。近づいても来ない。
私はそれを見つけると、母の傍へと走っていった。
あれは『おかあさん』ではない。これが『おかあさん』だと確認するために。



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